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村上 真奈美(むらかみ まなみ)

羽が生えているような村上さんが、地元・本別町に戻ってきてゆったりと羽を休める喫茶店をオープンするまでの物語り

羽が生えているような行動的な村上真奈美さん。飲食店での経験や韓国でのワーケーションなどを経て、本別町の地域おこし協力隊としてUターンしてきました。地元・本別町でたくさんの人々の後押しも受けて、2023年9月に目標だった地元でのゆったりした喫茶店をオープン。

村上 真奈美(むらかみ まなみ) ※旧姓 南部(なんぶ)
本別町生まれ、本別町育ち。小中高を本別で過ごし、その後調理専門学校に通って、飲食店などでの勤務経験や韓国でのワーケーションを経て、2021年から本別町地域おこし協力隊の観光推進員として着任。協力隊を卒業し、地元での喫茶店オープンを2023年9月に予定。

「食べていくための仕事に就きたい」気持ちから飲食の世界へ

-はじめに、村上さんって、どんな方ですか?

村上 真奈美(以下、村上)さん:本別生まれで、本別育ちで。勇足小、勇足中から高校卒業まで本別ですね。村上家は本別町の開町のころ(約120年前)から代々暮らしているそうです。

-そしたら、本別高校ですよね。高校卒業後は、どうされたんですか?

村上: その後、札幌の調理師の専門学校に通うことになりました。もともと、小学校からものを作ることとか服を作ったりするのが好きで。ファッション系が好きで、スカートとか作るのが好きだったのでデザイナーなどの仕事につきたいなってずっと思ってたんですけど。 ただ、真剣に進路を考えた時に、お母さんから「一回家出たら戻ってこれないから、自分一人で生きていかないといけない」みたいな感じで言われて。今思うと、冗談だとおもうんですけど、当時すごく真に受けてしまって。だから、真に受けて初めて自分ひとりで食べて行くことを考えた時に、田舎に住んでると、デザイナーのような職業のことがまったくわからなかったんです。その当時調べる手段もなくて。それで、飲食業なら食べ物が身近にあるので、食べるものには困らないのかな?って。

-なるほど。さすがに食べ物なら、必ずみんな食べてるし、ってことなんですね。

村上: つまみ食いで、お腹も満たされるかな(笑)って。料理するのも好きだったので、それで調理師の専門学校に入って、そのまま成り行きでホテルに就職しました。

-ホテルって、結構厳しい世界ですよね?

村上: そうですね。宴会料理や大人数のパーティー、担当は結婚式でした。洋食中心に和食や中華などもやりました。でも、結構、理不尽なこととかが多かったので、何のためにそこで働いているかが分からなくなって。2年経たないぐらいで辞めました。

 

そのまま、札幌に残って、学校時代好きだったカフェで働く場を探してたんですけどあまり出会いがなく。結局、居酒屋みたいなお店で、アルバイトでずっと働いていました。その後、そこの店が潰れて無くなってしまった時に、もういいかなって思って、こっちに帰ってくる事にしました。

 

自分を探して、たどり着いた身近な外国・韓国

-そうなんですね。もう都会にいる必要を感じなくなった?

村上: 札幌は遊びに行く場所でいいかなって。それで、ずっと地元に戻ろうと思っていたので、22・3ぐらいの時に十勝に戻ってきました。当時は珍しく帯広のカフェの募集があったので、そこを受けたんですよね。結構、すごい人数受けてたそうなんですけど、なんか受かったので、そこで4年働いてました。

-じゃあ十勝に戻ってきたんですね。その時は本別から通ってたのですか?

村上: その時は帯広に住んでました。その頃はずっと忙しくて、ほとんど休みもないくらい働いていました。そんな時に、ちょうどSNSとかが流行りだした頃だったのですが、みんなの投稿が目に入ってきたんです。旅行に行ったとか、そんな投稿ばっかり目に飛び込んでくるようになって。色々見てるとだんだん羨ましくなって。

休みがとれないから、旅行とか難しいなぁって思ったので、仕事を辞めることにしました。それで、日本にいたらなんか働かなきゃいけないと思いこんでいたので、たまたま見つけたワーキングホリデー制度で、オーストラリアとかカナダとかなら英語も習えるし、最高だと思ったのですが、なんせお金がなかったので、日本から一番近いとこを探したら、韓国ということで。そっから勉強して。

-韓国では何をされていたんですか?

村上: 韓国では、すぐに学校に行こうとしたんですけど、書類が足りなくて行けなくて。次の学期からになっちゃうため三か月ぐらい空いてしまうので、暇すぎたのですぐアルバイトを探しました。バームクーヘン屋さんで働いてました。なんとかなるもんですね。

-アルバイトを探して働くっていうのは、日本人なら大丈夫なものなんですか?

村上: 意外と日本語のサイトなんかもあって、日本人観光客も沢山いるし。喋れなくても全然働けますね。結局、行ったり、戻ったりとかして。一年ちょっと滞在していました。楽しかったですね。皆、韓国人は細かいこと気にしない(笑)。しかも優しいですね。結構なんでも助けてくれるんですよね。

 

地域おこし協力隊として地元・本別へ

-なるほど。じゃあ、それで韓国から戻ってきて、それで本別へ?

村上: もう、その頃から本別で自分のお店を出したいと思っていたんです。ただ、お店を出すために勉強しないといけないと思って、札幌に行こうと思ったんですけど、遠かったので、本別のことをリサーチしながら準備もしたかったので、結局は帯広の元のカフェに一旦出戻りで、働かせてもらって。色々学ばせてもらいました。

それで、仕事しながら、こっちで物件探しをしているとき、たまたま本別町の役場に相談に行ったら、じゃあ地域おこし協力隊しながら、収入を得ながら探したらいいじゃんっていう話になったんです。そういう方法があるんだなと思って。役場の人が薦めるなら良いかなって思って。

-素直ですね(笑)。結果的に(協力隊)2年半ぐらいですか?やってみてどうでしたか?

村上: 協力隊の活動は、最初すごい悩んだんですよ。そもそも、協力隊をメインとして来たわけじゃなくて、どういう活動をしたりすればいいのかよくわからず、役場に入ったのも初めてだったので。仕事の差っていうか、今までバリバリ働いていたつもりなのですが、役場の職員さんは同じくバリバリ働いている中で、隣の席にいて、やることがない。。。自分で見つけなきゃいけないけど、何をするか分からないことにすごく悩んで。はじめは、蕁麻疹が出ました。

でも皆さん、すごい気を遣っていろいろ見せてくれたりとか、いろんなところ連れて行ってくれて、そこからどんどん町の人に知られるようになっていって。町の方から声かけてくれるようなことが増えてきて、それがすごい嬉しかったですね。そこから、少しずつ何をすべきかが分かってきた。

 

 

-協力隊として働く中で一番思い出に残っている事はありますか?

村上: やっぱり、うれしいのは町の人に声をかけてもらえることですね。広報誌みたいなのに載ったときに、面識のないおばあちゃんが電話をかけてきてくれて、「カフェがんばりなさい」とか、たくさん声をかけてくださったんです。

-それはすごいですね。そういうことは、都会ではなかなかないですよね。

村上: その後に協力隊イベントとかやった時にも来てくれたりして。町の人たちのサポートを受けながら活動できるっていうのが最高にうれしいですね。しかも自分の故郷でもあるので。

-他の協力隊のメンバーとの関わりなどはいかがでしたか?

村上: 最初は、お互い別々の役割だったり、同じ担当の(樽美)瑞希ちゃんとかでも、やっぱりやってきたことや考え方も違うし、意見がみんなと合わなかったりすることとかもあったりとかして、結構難しくて。それでも、喧嘩とかもしたこともあるけど、イベントとかをやっていく中で、だんだんそれぞれの役割とかが自然と分担しながら協力しながら取り組めるようになって。一緒にやってこれて、精神的にも支えになったし、本当に良かったです。

-これまでは本別の協力隊は、あまり定着が出来ていなかったと思うのですが、村上さんたちが来てからすごくいい感じですよね。それで、うまく行きはじめて、さらに村上さんが協力隊を卒業して、さらに活躍されると。これから、残って活躍する人達にも刺激になるし、またその後入ってくる人たちも続きやすいですね。

村上:はい。私たちもこれからの協力隊を受け入れたりとか、サポートできるような感じで、行けるとうれしいですよね。

 

居心地の良い地元の居場所『喫茶ゆゆひ』オープンへ

-いよいよ9月からですね。

村上: はい。いよいよ、『喫茶ゆゆひ』9月からオープンです。

-お店の名前の由来は?

村上: 名前の由来は韓国語で、ニュアンスとしては「悠々と流れる」みたいな、のんびりとしたという感じです。韓国語の響きが好きだっていうことと、日本ともう一つ住んでた大切な場所っていうことで。

-じゃあ、韓国の人たちもお店に来てくれたら嬉しいですね。

村上: そうですね、友達とかが来てくれたらうれしいですね。お店のコンセプトは、ゆっくり長居してもらえるような、居心地のいいような、お店にしたいな、と。提供予定のメニューは、朝は栄養たっぷりの満足できるモーニングで、ランチは日替わりのランチプレート。その時どきによって、パスタとかカレーとか変わっていくような。それと、ゆっくりできる喫茶の時間ですね。

「カフェ」ではなくて「喫茶」というイメージが好きで。ちょっと落ち着く、懐かしいメニューを出せたらなって。

-あらためて、お話うかがっていると、村上さん、すごい行動力ですよね。決断力がすごい。

村上: 昔、おばあちゃんに羽が生えてるみたいにどこでも飛んで行くって言われたことがあります。私が忙しくて旅行もあまりいけなかった時期でも、仕事を早上がりして、そのままフライトで飛んで、次の日遅番で入るみたいな(笑)。

-村上さんは、自分ってどんな人だと思っている感じですか?

村上:自分が好きなことをしたい人ですね。考えて、じゃあやらないでいようとかは、基本無いです(笑)。やりたいことをやる、面白いことをやろうと。

-なんか不思議な、普通の女の子のような感じに見えても、その決断力とかすごいなって。

村上: 細かいことを考えないですね。思ったらやろうと。人からどう見られようと、気にしない。それでも人に迷惑をかけない前提であればいいと思うし。

-それでは、オープン直前ですが準備などはどんな感じですか?

村上: なかなか計画を立てることとか、それを取り組んでいくこととか、ここはちょっと苦労してきました。さすがに、お店を開くのは勢いだけだとさすがに難しく。

-でも、村上さんみたいな人だったら、きっと色々な人が、自然と手を貸したくなっちゃう感じだし、人柄だったり人格だったり、何かやろうとしていたら応援したくなるような人柄ですよね。

村上: いろんな人たちが協力してくれたり、声かけてくれてサポートしてくれるのは、本当にありがたいし、ちょっと安心して準備ができるという感じがあります。不安で一杯みたいな感じではないですね。役場の方で取り組んでいる新しい事業をする人をチャレンジする制度で、藤井さんなどの事業の専門家に相談できたりするのも大きかったです。

-なるほど。でもそういう色々な面でサポートしてくれる人がいたり、頑張ろうとしている人を応援するような人がいたりとか、きっとそういう町なんですね。

村上: 本当に思います。昔は分からなかったんですけど、すごく応援してくれる町なんだって、戻ってきて活動して知りました。

-ありがとうございます。じゃあ、最後にオープンに向けて、メッセージをお願いします。

村上: 誰でも、気軽に来られて、ちょっとでも特別な時間を過ごしてもらえたらいいなと思っています。ぜひ、お店に遊びにいらしてください。

 

喫茶ゆゆひ

住所:北海道本別町北2丁目2-7

営業時間:7:00~19:00(木曜日定休日)

公式Instagram:https://www.instagram.com/yuyuhi_kissa/

 

インタビュアー
地域包括ケア研究所 藤井 雅巳

抽象的に捉えられがちな「地域包括ケアシステム」を、実践を通して具現化するシンクタンク「地域包括ケア研究所」の代表理事。2017年より本別町に頻繁に足を運び、町の魅力として、「人」にフォーカスするWebメディア「HOTほんべつ」を企画。

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